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Jan 26, 20263 weeks ago

The Spring I Cannot Return To

スイスイ/エッセイスト@suisuiayaka

AI Summary

This article is a heartfelt letter from a mother to her past self in 2014, right after giving birth to her first child. Adopting a time-travel perspective, the author recounts precious memories, anxieties, and reflections from childbirth to her children turning 11, centering on the experiences of motherhood, the passage of time, and the complex emotions brought by a child's growth. The author details the emotional turbulence post-delivery, the intense fears of new motherhood, and the tiny, mundane moments of raising two boys. She mentions unnecessary anxieties fueled by online information, the pressure of choosing a name, and the loneliness of not fitting into mom groups—experiences she now sees as blessings that allowed undivided attention to her child. The letter is triggered by an old photo from 2020; a stranger's comment online, "They must be so big now," suddenly makes her acutely aware of how time has flown, with her children now independent sixth-graders on a school trip. The letter concludes in a warm, bittersweet tone as the author realizes each phase—be it nursing at dusk, nighttime fevers, or pushing a small cart at the supermarket—is transient and will not return. She urges her past self to take more photos and videos, to cherish the present. The ultimate takeaway is that motherhood is filled with challenges and worries, but the daily moments of close connection with one's children form invaluable memories, and time reveals its harshness and beauty through their rapid growth.

2014年3月19日。あの日。
初めて子供を産んだ私へ。

かなり情報が多いかもしれないけど一気に伝えるから聞いてほしい。嘘かと思うこともあるかもしれないけど信じてほしい。

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出産おつかれさま。自分の腰が岩になってそれをハンマーで砕かれる痛みで産んだよね。でも会陰切開はしなくて済んだし、スルッと生まれた瞬間かなり気持ちよかったよね?その感覚をあなたはそこから一年半後、ブログみたいなものに書いて、それをきっかけにエッセイストデビューします。意味わかんないと思うけど本当にそうなるからなんとなく覚えといてください。

今は病室に赤ちゃんといますか?それならあと4時間後くらいにララハウスのチーズケーキが病室に10個届きます。あなたの父親が、あなたが世界で一番好きなそのチーズケーキを、大量に買って持ってきてくれるけど、ララハウスはその2年後突然閉店してしまって二度と食べられなくなるから目いっぱい食べて欲しい。これは本当に。

それで、家族みんなが帰ったあと。赤ちゃんと二人きりになるはじめての夜中。突然あなたは恐ろしくなります。椎名林檎が初めて子供を産んだとき、9.11が起こり、飛行機がビルにぶつかる映像に涙が止まらなくなり息子を思って曲を作った気持ちを、あなたは初めて急に理解します。それであなたは、その夜、何時間も号泣します。大丈夫と思って落ち着いてもまたすぐに涙がでる。この小さい生き物に何かあったらどうしよう、テロとか今起きたらどうしようって、体感したことない巨大な不安にどうしようもなくなります。でもそれほどの状態は入院中くらいで、ホルモンバランスの問題だから安心して欲しい。それより自分が起きるたび隣に“赤ちゃん”がいることにびっくりして毎回新鮮に「赤ちゃんだ!?」と驚くけど、それはそこから3ヶ月くらい慣れないです。

退院するとき、外が春の風になっていて、そのあたたかさと匂いはそこから11年経っても忘れません。

あなたは退院してからしばらく実家で、お母さんに手伝ってもらって子育てをします。インターネットで見た「蛍光灯が赤ちゃんの目に良くない」という情報を信じて実家中の蛍光灯をLEDに変えたくなります。でも、なんと「1ヶ月検診」の病室がめちゃくちゃ蛍光灯だらけです。ていうか先に安心させたいのだけど、あなたの赤ちゃんは11年経ったいまもすくすく元気です。小6です。いま2025年10月17日なんだけど、まさに修学旅行2日目です。班でリーダーになって、京都をタクシーで巡っています。今ってタクシーでグループ行動するんだって。ちょっとネタバレしすぎたか。話戻します。

そういえば産んで10日間くらい、あなたは赤ちゃんの名前の締切に追われます!画数とか辞書とかインターネットを見まくって最後まで「この名前でいいのか?」と悩み倒して頭がおかしくなります。でもその名前で良いです。いまその赤ちゃんは、その名前にまつわるニックネームで沢山の友達に呼ばれています。友達たくさんできるよ。面白い子だよ。

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2年後に弟ができます。突然最大のネタバレでごめんだけど、あなたがさっき産んだばかりの初めての赤ちゃんをAと呼びます。そして次男をBと呼びます。(あ、2人目も男の子です)

Aが2歳になる頃、Bが生まれます。つまり、Aが一人っ子でいられる時期は約2年です。そして、母になって最初の2年、全然ママ友ができないあなたは結構悩みます。もっと他の子と遊ばせたほうがいいはずだよな......と落ち込みますが、今となればそれはラッキーです。あなたは児童館に馴染めず、その代わりAと毎日イオンに行って抱っこ紐のなかのAに話しかけ続けます。フードコートのおうどんも、その子は食べられるようになります。ストローも上手に吸えるようになります。そのうちコップも両手で持って、スプーンもフォークも使います。トイザらスでトーマスのおもちゃめがけて「おーどん!」と歩きます。(ゴードン)いつのまにか自分で靴も上手にはいて、長袖もちゃんとぬげます。そういう小さなひとつひとつを、あなたは毎日見れます。

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ちなみに、なんでこんな手紙を書こう思ったかというと、昨日「スレッズ」にもらったコメントがきっかけでした。「スレッズ」というのは消毒されたツイッターです。それで39歳になってあなたは、なぜか急にスレッズに過去の写真を投稿します。それが昨日の私です。

この写真を数年ぶりに載せたのです。

これは2020年。小1と年中。とてもかわいい子たちだよね。世界中で脅威的ウィルスが流行って、家から出られなくなっている頃に撮った写真です。学校も幼稚園もずっと休みだから毎日家の前で水鉄砲をしたりレゴをしたりするなか光のようなおやつ時間でした。この写真投稿に昨日沢山コメントが入り、そのひとつが以下のものでした。

“これ!!!数年前にTwitterでみて忘れられなくて、私も息子が生まれたのでこんな写真撮りたいな〜なんて最近思ってたんです!!!また出会えた!この子達も大きくなってるんでしょうね〜🥰🥰🥰”

何気ないコメントでした。これを私は今朝6:00に目覚めてすぐ読みました。「この子達も大きくなってるんでしょうね〜🥰🥰🥰」というやさしい一文をみたとき、急に、私の体はドローンになったように離れ、いまを客観視したのです。

ああそっか、この子達は、すごい、ほんとに、大きくなったよな、と思った。しかも今日わたし長男のこと朝起こしに行こうとしちゃって、ああちがう、修学旅行いってるんだ、って思って、それで、ああ、これからどんどん大きくなるんだ、起こしに行ったりとか、しなくて良くなってくことが、どんどん増えるんだ、って思ったら急にこの「この子達も大きくなってるんでしょうね〜🥰🥰🥰」がめちゃくちゃ自分に広がって広がって止まらなくなって、ほんとにほんとにほんとにほんとに“ほんとに大きくなった”って思ったらすごい気持ちになって、あなたに全部こういうことを伝えたくなったのでした。おっぱいをあげながら眠てしまう夕方とか、夜中の熱とか、ちいさいカートをスーパーで押す背中とか、「さーとーさーだじょ」ってトレンディエンジェル斉藤さんの真似してきたりとか、苺ばっかり食べてなんどもなんどもおかわりと言ってくれたりとか、家の階段で上手に座っておやつパンたべたりとか、お店の人に深くおじぎしたりとか、ウルトラマンとか、入園式とか、劇の発表のながいセリフとか、卒園式とか、ランドセルに激デカ図鑑2冊入れて毎日登校したりとか。

いまは10月で、秋になりはじめていて、コメダで急いでこれを書いてる。その春に行けないけど、この秋にもいつか来れなくなる。

AとBはおもしろい。自分たちの好きなことが何かすごくわかっている。毎日かなり喧嘩している。校庭と4階の窓からそれぞれが中指立てて叫んでましたって面談で先生に言われた。(先生爆笑してた)Aは最近自分の部屋で眠るようになった!Bはいつも私にくっつきながら異世界転生アニメ見てる。ユニバが大好きで、こないだはなんと2人だけでフライングダイナソーに乗ってた!写真をたくさん撮ってほしい。多すぎるってくらい撮って、あと動画もたくさん残して。iCloudはすぐ有料にして。いつかこの秋にきたら、私みたいに昔の写真を見返しまくって、気まぐれにどこかに投稿して。ありがとうね、おめでとう。母になったあなたへ。

おわり

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追記※「ドローン」が当時浸透していないかもしれません。めちゃくちゃ遠くから撮れる飛行型カメラです。

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スイスイ/エッセイスト